「マイホームを買いたいけど、頭金っていくら必要?」「そもそも頭金がないと買えないの?」──そんな不安を持っている20代・30代の方も多いと思います。
この記事では、現役不動産営業として多くのお客様を見てきた私が、「頭金って実際どうなの?」という疑問に答えます。
結論から言うと、頭金が“ゼロ”でも家は買えます。ただし、メリット・デメリットを理解しておくことが重要です。
「頭金がなくてマイホームを諦めかけている…」そんな方にこそ読んでほしい内容になっています。
1. 頭金とは?住宅購入における役割と相場
頭金の意味と一般的な目安
住宅購入時の「頭金」とは、家の購入価格の一部を現金で最初に支払うお金のことを指します。例えば、3,000万円の家を買うとき、頭金が300万円なら、残りの2,700万円を住宅ローンとして借りることになります。
日本では一般的に、購入価格の1割から2割(300万円〜600万円程度)を頭金として準備するケースが多いです。これは、頭金を多くするほどローンの借入額が減り、毎月の返済額や支払う利息を抑えられるためです。
ただ、20代夫婦のAさんの場合、貯金が500万円で頭金として200万円を用意し、残りはローンで借りる計画を立てました。最初にまとまった頭金を入れたことで、月々の返済額が抑えられ、生活費や子どもの教育費にも余裕を持てています。
頭金が多いと住宅ローンにどう影響する?
頭金を多く用意すると、銀行からの審査が通りやすくなるほか、借入金額が少なくなるため毎月の返済負担も軽くなります。
例えば、3,000万円の物件で頭金が300万円の場合と0円の場合を比較すると…
- 頭金300万円の場合借入額:2,700万円35年ローン・変動金利0.5%(仮)で計算すると、月々約76,000円の返済となり、総返済額は約3,200万円程度です。
- 頭金0円の場合借入額:3,000万円同条件で月々約84,000円の返済、総返済額は約3,550万円程度に増えます。
このように、頭金の差が毎月の支払いに約8,000円、総支払いでは約350万円もの差になることも。
ただし、頭金を貯めるために生活費を切り詰めすぎたり、急な出費に備える資金がなくなると、かえって生活が苦しくなることもあるので、無理のない範囲で準備することが大切です。
2. 住宅ローンの基本:種類と選び方
住宅ローンの種類と特徴
住宅ローンは大きく分けて「変動金利型」「固定金利型」「固定期間選択型」の3つがあります。
・変動金利型
市場の金利動向によって返済額が変わるタイプです。現在の日本では低金利が続いており、例えば借入額3,000万円、返済期間35年の場合、金利0.5%なら月々約76,000円の返済になります。ただし、将来的に金利が上がるリスクもあります。
・固定金利型
契約時の金利が返済終了まで変わらないタイプです。返済額が一定なので計画が立てやすい反面、金利は変動型より高めで、同条件で約90,000円程度の返済になることが多いです。
・固定期間選択型
一定期間(5年や10年など)だけ固定金利で、その後は変動金利に切り替わるタイプです。低金利の恩恵と返済額の安定を両立させたい人に向いています。
ローンタイプの選び方と実際の例
例えば、30代の夫婦Bさんは安定した収入があり、将来の支出も見通せるため固定金利型を選択。返済額が変わらない安心感を重視しています。
一方、40代のCさんは収入が変動しやすい自営業。低金利でスタートできる変動金利を選び、収入が安定した時点で繰上げ返済で返済期間を短縮する予定です。
このように、住宅ローンの選び方は収入状況、ライフプラン、リスク許容度に合わせて変わります。将来の金利動向や生活の変化も見越しながら、自分に合ったローンを選ぶことが重要です。
3. 頭金なしでも家は買える?その理由とポイント
頭金なしで購入できるケースとは?
「家を買うなら頭金は必須」――そう思っていませんか?
実は今の住宅ローンは、頭金0円でも家を買うことが可能です。
その理由は、金融機関が提供する「諸費用込みローン」や「フルローン」があるからです。これは、住宅の購入価格に加え、銀行に支払う保証料・登記費用・仲介手数料・火災保険などの初期費用もまとめて借りられる仕組みです。
たとえば、物件価格が2,800万円で、諸費用が200万円かかったとしても、3,000万円まるごとローンで借りることができる場合があります。実際、ほとんどの金融機関がフルローンに対応しています。
これにより、手元にまとまった貯金がなくても住宅購入のハードルはグッと下がります。
実際に、40代夫婦Dさんは共働きで、教育費や老後のための貯蓄を優先したかったため、頭金なしで住宅ローンを組みました。毎月の返済は少し多くなりましたが、生活に無理のない範囲でマイホームを手に入れ、「頭金がなくても家が買えるとは思わなかった」と話しています。
頭金なしのメリット・デメリット
メリット
・貯金を崩さずに家を買える
頭金や諸費用で数百万円を用意する必要がないため、手元に資金を残すことができます。これは、引っ越し代・家具家電の購入費・もしもの備えに大きな安心となります。
・購入時期を早められる
「頭金を貯めてから…」と待たずに済むので、気に入った物件にすぐ手を出せるチャンスが広がります。
デメリット
・借入額が多くなり、返済額・利息が増える
たとえば、頭金300万円を入れて借入額が2,700万円のケースと、頭金0円で3,000万円借りたケースを比較すると…
▼【例】金利0.5%、35年ローンの場合
- 借入額2,700万円 → 月々約76,000円、総支払額 約3,200万円
- 借入額3,000万円 → 月々約84,000円、総支払額 約3,560万円
⇒ 総額で約360万円の差が出ます。
・審査に通りにくいこともある
フルローンを希望すると、金融機関から「返済能力」に加えて「家計管理力」も見られます。信用情報に問題があったり、収入が不安定な場合は審査が厳しくなることも。
4. 住宅ローンの審査で重要視されるポイント
年収や勤続年数の影響
住宅ローンを組む際に、最も重要視されるのが「返済能力」です。
金融機関は主に以下のポイントをチェックします。
- 年収(単独 or 夫婦合算)
- 勤続年数・雇用形態(正社員・契約社員・自営業など)
- 他の借入(車のローン、カードローン、フリーローンなど)
- 年齢と完済年齢
- 健康状態(団信加入のため)
たとえば、年収400万円の方が3,000万円のローンを希望した場合、年収の7.5倍。少し審査が厳しくなる可能性があります。一方、夫婦合算で年収700万円あれば、借入希望額が年収の4.3倍となり、比較的通りやすくなります。
【体験談】
30代前半のEさん(年収450万円)は、勤続3年目で住宅ローンを申し込みました。1年目だった頃は審査に落ちてしまったそうですが、勤務先が安定企業であり、3年続けた実績を評価されて無事に通過。本人も「年収よりも、勤続年数や安定性を見られるとは思っていなかった」と話しています。
一般的には、勤続年数1年以上、正社員であることが一つの目安ですが、最近では1年未満でも通るケースも増えています。特に夫婦合算収入や共働き世帯は有利に働きやすいです。
返済負担率と借入限度額の考え方
審査時にもうひとつ注目されるのが「返済負担率(返済比率)」です。これは、年収に対して住宅ローンの年間返済額がどれくらいの割合かを示した数字です。
目安としては、年収に対して以下が基準とされます:
- 年収400万円未満 → 返済負担率 30%以下
- 年収400万円以上 → 返済負担率 35%以下
たとえば、年収500万円の方なら、年間のローン返済額が175万円(月14.5万円)以内なら、審査には通りやすい水準と言えます。
【例】
- 年収500万円で、借入額3,000万円、金利0.6%、35年ローン
- 月々返済:約82,000円 → 年間:約98万円
- 返済負担率:約19.6% → かなり余裕あり◎
この「返済比率」が高すぎると、たとえ年収が高くても「家計が苦しくなる可能性がある」と判断され、審査に通らないことがあります。
【体験談】
共働きのFさん夫婦(合算年収800万円)は、車のローン残債が250万円ありました。住宅ローンの返済比率自体は基準内だったものの、「借入が多い家庭」と見なされ、融資額を減額されてしまいました。そこで車のローンを一括返済して再審査したところ、無事に希望額で通過。
「他のローン残高も、見られているって知らなかった」と言っていました。
5. 頭金以外にかかる初期費用の内訳と賢い支払い方
初期費用ってどれくらいかかる?
住宅購入のとき、意外と見落としがちなのが「頭金以外の初期費用」。
物件価格とは別に、以下のような費用が必要になります。
項目 | 内容の説明 | 目安金額 |
保証料 | ローン返済ができなくなった場合の保証 | 約60〜80万円 |
登記費用 (登録免許税+司法書士報酬) | 所有権や抵当権を登録する費用 | 約25〜40万円 |
仲介手数料 | 不動産会社に支払う手数料 | 約100万円(※) |
火災保険料 | 万一に備える保険(最長5年契約) | 約15〜25万円 |
印紙税 | 売買契約書に貼る収入印紙の費用 | 約1〜2万円 |
その他 (引越し代・家具家電など) | 必須ではないが要準備 | 約30〜100万円 |
※仲介手数料の上限=物件価格×3%+6万円(+消費税)
→合計すると150〜250万円程度になることも珍しくありません。
【体験談:Gさん(30代・会社員)】
Gさんは新築の建売住宅(2,600万円)を購入し、頭金ゼロで住宅ローンを組みました。
しかし後になって「仲介手数料」や「火災保険」などで100万円以上の現金が必要だと知り、慌ててボーナスを前倒しで取り崩したそうです。
「頭金はローンでなんとかなると思っていたけど、諸費用の存在を甘く見てた」と話しています。
初期費用は住宅ローンに含められる?
実は、こういった諸費用も「住宅ローンに含めて借りられる」ケースが増えています。
これは「諸費用ローン」や「フルローン」と呼ばれ、次のようなパターンがあります:
- 物件価格+諸費用をまとめて借りられる住宅ローン
- 物件価格は通常の住宅ローン、諸費用は別のローン(※金利高め)
【例】物件価格2,800万円、諸費用200万円 → 合計3,000万円で一括借入OK
もちろん借入額が増える分、返済額と支払う利息は増えますが、「手元の現金を残せる」ことは非常に大きなメリットです。
急な修理や転職、子育てなど、人生の不測の事態に備えて、現金をキープしておくのは堅実な選択と言えます。
【補足:金融機関によっては諸費用ローンの金利が高いこともあるため、事前に条件を比較しましょう。】
6. 無理なく返せる住宅ローンの組み方
月々の返済額は「家賃感覚」で考えるのが基本
住宅ローンは、借りられる額ではなく「無理なく返せる額」で組むのが鉄則です。
その目安になるのが、今現在支払っている家賃です。
たとえば、家賃9万円の賃貸に住んでいた人が、月々11万円のローン返済を計画すると、2万円の負担増。固定費が上がることで家計が苦しくなり、将来の貯蓄や子どもの教育費に影響が出る可能性も。
【参考例】
借入額 | 金利(変動0.5%) | 返済期間 | 月々の返済額 |
2,500万円 | 0.5% | 35年 | 約70,000円 |
3,000万円 | 0.5% | 35年 | 約84,000円 |
3,500万円 | 0.5% | 35年 | 約98,000円 |
※目安です。ボーナス払いなし、元利均等返済で計算。
【体験談:Hさん(40代・夫婦+子2人)】
Hさんは年収750万円。住宅展示場で気に入った4,000万円の新築を検討していましたが、試算してみると月々の返済が11万円を超え、生活費に余裕がなくなると判明。
最終的に3,300万円の物件に変更。月々の返済は約9万円で、貯蓄・レジャー・教育費もバランスよく確保できているそうです。
「見栄を張らずに、自分たちの身の丈に合った物件にして正解だった」と話してくれました。
ボーナス払いには頼りすぎない
ボーナス併用払いにすると、月々の返済額を抑えられるように見えますが、将来のボーナスが保証されている人はほとんどいません。
とくに共働き家庭や自営業者は、以下のリスクに注意が必要です:
- ボーナスが減額・廃止になる可能性
- 教育費や急な支出がかさみ、ボーナスを住宅ローンに充てられなくなる
そのため、基本は「ボーナス払いなし」でシミュレーションし、余裕があれば繰り上げ返済に回すという考え方がおすすめです。
「住宅ローンシミュレーション」は必ず活用しよう
住宅購入を考え始めたら、ネット上の「住宅ローンシミュレーター(銀行HPやSUUMOなど)」で返済額を試算することから始めましょう。
たとえば、以下のような項目を入力できます:
- 借入額
- 返済期間(30年・35年など)
- 金利(固定・変動)
- ボーナス併用の有無
→ 月々いくらか、総返済額はいくらになるかが一目でわかります!
無理のない返済は「身の丈+将来の変化」まで見越して組むのが成功のポイントです。
7. 実際に購入した人たちのリアルな声
マイホーム購入は人生最大級の買い物。
頭金の有無や住宅ローンの組み方について、実際に購入した人たちはどんな選択をし、どんな気づきがあったのでしょうか?年齢や家族構成が異なる3名の体験談をご紹介します。
【体験談:Gさん|30代・共働き夫婦・子なし】
「頭金ゼロでも何とかなるっていうけど、正直不安でした。でも、“諸費用もローンに含められる”と知って、一気に現実味が出ました。実際に購入したのは2,900万円の中古マンション。頭金も諸費用もすべて住宅ローンで組みましたが、月々の返済は8万3,000円ほど。いまの家賃とほぼ変わらない金額でマイホームに住めて、精神的にもかなり安心しています。」
【体験談:Hさん|40代・子ども2人の4人家族】
「もともと頭金を500万円用意するつもりで貯金していましたが、将来の教育費を考えて、頭金はあえて100万円だけにしました。差額の400万円は投資と緊急用資金にまわしています。3,300万円のローンを変動金利0.5%、35年で組んで月々の返済は約89,000円。家計に負担もなく、いまのところ正解だったと思っています。」
【体験談:Iさん|20代後半・新婚夫婦】
「周りから“まだ早いんじゃない?”と言われながらも、勢いで2,600万円の建売住宅を購入。実は頭金ゼロでフルローンでしたが、住宅営業の人に“今の家賃8万円払えてるなら、月返済も同じくらいだから大丈夫”と背中を押されて決断。結果、ローン審査も通って、月々76,000円くらいで持ち家生活スタート!毎日帰る場所があるって、想像以上に心が落ち着きます。」
それぞれの選択に「正解」がある
「頭金ゼロでも安心して返せる人」もいれば、
「貯金を残すためにあえて頭金を抑える人」もいます。
そしてみんな共通しているのは、「無理のない返済計画を自分でしっかり立てていること」。
住宅ローンに“絶対の正解”はありませんが、家族構成・年齢・将来設計をしっかり見つめたうえでの選択が、後悔しないマイホーム購入への近道です。
✍️ まとめ:頭金の有無より「返せる計画」が大切
マイホーム購入では、頭金の有無がクローズアップされがちですが、**本当に大切なのは「自分に合った返済計画」**です。
ポイントをおさらいしましょう:
- ✅ 頭金がなくても住宅ローンは組める(諸費用込みOKな金融機関多数)
- ✅ 金利タイプや返済方法は、ライフスタイルに合わせて選ぶべし
- ✅ 初期費用や毎月の返済額を甘く見ないこと
- ✅ ボーナス払いに頼らず、手堅く計画する
- ✅ 他の人の体験談からヒントを得よう!
住宅ローンは長期戦ですが、知識と準備があれば決して怖くありません。
将来の安心と暮らしの充実のために、「いまの自分にちょうどいい選択」をすることが、後悔しない家づくりへの一番の近道です。
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